認知症と診断された彼女のこと。他にも病気はあるようですが・・。
私が把握していた事は、認知症があるという事と、最近、入院中の病院で転倒して大腿骨頚部骨折の手術をしたという情報だけでした。
そんな彼女との会話は、時折、同じことを何度も聞くこと以外は、普通の会話が成立していました。
その同じことを何度も聞かれることについて、改めて考えてみると、彼女が気になっている事、不安に思っている事を何度も聞いてくることに気付きました。
つまり、どこに行くのか、お兄さんに会いに行くと説明すると、今度はお兄様のようすのことを聞かれます。兄は病気なのか、生きているのか、病気は悪い状態なのかと病気を心配する内容に変わりました。
その他にも、今まで過ごしていた病院の事は全く話には出てきませんでしたが、それまで住んでいた我が家のことは、しっかりと覚えていました。まるで、その家から外出してきたように「戸締りをしたかしら?」というお話は、時々出てきていました。
他の話題についての受け答えは、しっかりと成立していました。
例えば、彼女は、元陶芸家。手の関節も変形して、とても太くなっている状態でした。
そんな彼女に、「陶芸はお金がかかるのでしょう?」と尋ねると、「材料の土は、そんなに高くないけれど焼いてもらうのが高いのよ」と。さらに、話題が兄弟の話になりました。「私は4人兄弟で、女は私だけ、だからお転婆に育ったのよねー」と、話すと、「じゃー、私の家は、6人兄弟で兄が一人だけ男だから、その逆ね!」と、大笑いしたり・・。
認知症と診断されていた彼女ですが、20時間共に過ごした私には、彼女の病気の事はあまり気にもならずに楽しく一緒に旅をしたお友達でした。
加齢とともに誰にでもおこる物忘れ。決して他人事ではありません。
彼女の言動には、大きな環境の変化に対する不安、周りは知らない人ばかり・・。そんな状況も大きく影響しているのは間違いないのではないか。
その時々の不安の言葉が彼女の心の声だっと思うのです。
一日も早く、新しい生活に慣れて、兄妹との交流ができることを願っています。
また、ご家族と彼女との面会を阻んているものとしてコロナの感染対策も影響しているようでした。